2022年12月26日月曜日

ズボンに開きたる穴を読みける

 ひざこぞう
きたかぜこぞうと
こんにちは
もちろんしりも

これあなあきい

解説
膝と尻から北風が吹き込んでくるよ。
とってもアナーキーっぽいだろう? 寒いけどな。


ひざこぞう

しりあな

2022年8月15日月曜日

鰡を釣ったことはない

あさぼらけ
こぼらつりたる
ぼらあとの
ぼらぼらとうに
しごとさぼらん

 

解説
朝も早くからボラート(船を係留するための柱)に腰掛けて、小さなボラを釣っている。
ボラボラ島まで出張に来たものの、今日も仕事をサボってしまうなあ。
 
注)作者はボラボラ島へ行ったことはないし、ボラを釣ったこともない。
  2018年の(個人的な)歌会始めで詠んだものです。

妄想劇場「ダボとフラッシュダンス」

「うちは8ミリのダボ専門の工場だ。4ミリのダボなんて作れねえよ」
「なに言ってんだい、あんた。こんないい話に乗らない手はないよ」
「そんなこと言ったっておめえ、4ミリのダボを作ろうと思ったら、スウェーデンから別の機械を輸入しなくちゃならねえんだぜ? いくらかかると思ってるんだ」
「そんな金なんてアタシがどうにかするから、この仕事、受けてやんなよ。イトーさんだって困ってるんだからさ」
「アタシがどーにかって、おめえに当てはあるんかよ」
「アタシが昔、どんだけ稼いでたか、あんたは知らないんだねぇ」
「そんなこたぁ知ってるよ。おめえはあの店の1番の売れっ子ダンサーだったもんな。おめえの踊るフラッシュダンスなんて、本物よりも凄かったからな」
「なんですって?」
「いやね、イトーさん、こいつが本気出して踊った日にゃあ、ハリウッドの女優さんが尻込みするほどなんですよ」
「ほほう。4ミリのダボなんてもうどうでもいいんで、フラッシュダンスを踊って見せていただけませんか?」
「イトーさん、そんなに見てえんですか? おめえ、イトーさんのために踊ってやんな」
「しょうがないわねえ。
イトーさん、ここのお酒ちょっともらうよ
「え? お酒?」
「いやね、こいつ、一杯引っ掛けると踊りにキレがでるんですよ」
「もう好きなだけ飲んでください」

右が踊り子さんです




「メアリー」っていう台風が来た

 かたくちの
はまのいわしは
めありいに
もてあそばれて
すなにうもれん

解説
「かたくち」は「はまのいわし」にかかる枕詞。
目蟻に弄ばれたイワシが砂に埋もれかかっていますよ
 
カタクチイワシです
 
「目蟻」については、以下の論文をご覧ください。

暑いっすな

つちのなか
でてきてみるも
あつすぎて
いちまいぬいで
これせみぬうど

 快適な土の中の生活から試しに外へ出てみたけれど異様に暑いじゃないか。

とりあえず一枚脱いでみたけど、なんか違うものになってしまったな。え? おいら飛べるの? 聞いてねーよ。
 
セミと抜け殻

 

五言絶句


八災多目之
智金之華麗

誤犯徒友仁

有色丹枝葉

八つの災難と言われるほどの災難が多く続くこの頃ではあるが
智りを開くことは金の如く輝き美しいものである
誤りを犯した友は走って逃げていくが
丹色の枝葉のごとくすぐにばれてしまうことだろう

民明書房「明代の五言絶句」より。

「民明書房」意外と知られていないのですよね。
「魁! 男塾」に出てくる架空の出版社です。
なので、上記五言絶句も普通に読んじゃダメですよ。
やさいおおめの
ちきんのかれー
ごはんとともに
ゆうしょくにしよう

妄想劇場「ネズミ考」

 

多くの人たちはお金を払って大きなネズミを見に行くことを楽しみにしているようで、アメリカのみならず世界のあちこちに、その巨大ネズミを観覧し楽しむ施設が作られている。

余談だが、人づてにその巨大ネズミのいる場所が楽しいと知り、自分で確かめたのち、さらに多くの人たちにその楽しさを伝える。
それを知った人たちは、さらに他の人たちへ。
このようにネズミ算式に巨大ネズミを見に行く人たちが増えていくことを「鼠講」という。
話を戻そう。
 
人々は雌雄の巨大ネズミを見に行くと、まずネズミの耳の形を模した被り物、通称「ねずみみ」を購入し、頭につけて喜び、さらにネズミの絵の描かれた商品を買い漁る。
施設内にそれぞれ1匹ずつしかいないと言われている雌雄の巨大ネズミに遭遇すると、大喜びで巨大ネズミと共に記念撮影などを行う。
最終的に全身ネズミまみれになって家路に着くのである。
家に帰ってくると、またあの巨大ネズミに会いに行こうねと、ネズミと一緒に撮った記念写真を見ながら楽しそうに語り合っているわけだ。
ある晩のこと。
子どもたちは既に寝ている。
夫婦でぼんやりとテレビを見ていると、台所の方から物音がする。
「何だろ? ちょっとお父さん、見て来て」
お父さんにはその物音は聞こえなかったようで、生返事をしながら薄暗い台所へ向かう。
流しの上の蛍光灯を点けようと手を伸ばした瞬間、左足の上を何かが駆け抜ける。
「ひょぇ〜」
自分の喉から出てきた甲高い悲鳴に自分でびっくりしつつ、頭の中では今のはネズミだなと、妙に冷静に分析しているお父さん。
悲鳴を聞きつけたお母さんが慌ててやってきた。
「大丈夫?どうしたの?」
「ネズミがでた」
「え゛」
固まるお母さん。
翌朝の朝食時。
「昨夜、台所にネズミが出たんだ。お母さんはあまりの怖さに動けなくなっていたよ」
とお父さん。
「だってネズミってなんでも齧るでしょ? もしかしたら寝ている間にあななたちを齧るかもしれないし」
とお母さん。
「えー、やだー、ネズミ、怖いよ。どうにかしてよ」
と子どもたち。
家族に懇願されたお父さんは、その日は仕事を休んでホームセンターへ出かけ、ネズミ捕りや殺鼠剤などを山ほど買い込んできた。
買ってきたネズミ退治の諸々を、子どもたちにも手伝わせ、家中に置いていく。
不安で落ち着いて寝られない夜が続いた数日後の朝。ネズミ捕りに2匹のネズミが掛かっていた。
幸い既に息絶えていたので、そのままゴミ袋へ。
「あのネズミ、夫婦なのか恋人同士なのか、そんな感じかな」
「でも、捕まって良かったね」
「ネズミ算式に増えるっていうものね」
ネズミが一掃され、幸せそうな家族の朝の団欒。
その日はゴミの収集日だったので、お父さんが出勤途中にゴミ袋をゴミ収集場所へ置いて行く。
死んだ2匹のネズミは、燃えるゴミとして回収されて行った。
その晩の夕食後。
「ねえ、お父さん、またあそこ行こうよー、すんごい楽しいじゃん、ね、お母さん!」
「そうね、最近行ってないもんね。日曜日あたり行かない?」
「そうだな、最近ほとんど家族で出かけてなかったもんな」
日曜日。
子どもたちはネズミの絵の描かれたシャツを着て、家族揃って巨大な雌雄のネズミを見に行くのだった。
 
余談その2
従姉の子どもがまだ小さかった頃、その巨大ネズミを見に行ったところ、彼は恐怖のあまり泣きだし、挙句その晩は発熱したとのこと。
そんな人もおるね。